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木曜

愛人契約

ブスのパパ活
失職して日雇いの仕事で食いつないでいた時期があったんだけど、その行く先々で一緒になるおっちゃんがいた。まあ、僕もおっちゃんなんでどっちもどっちなんだが。
そのおっちゃんと何度か同じ仕事をする機会があって3回目くらいには挨拶して日常会話するくらいの仲になっていた。おっちゃんもまた失職して日銭稼ぎしながら再就職を模索していると言うことで同じ境遇と同世代と言うことで気づけば仲良くなっていた。
「愛人契約してマンションを買ってあげたりしていたんだけどね。文無しになったら途端にこのありさまよ」
と、おっちゃんは自虐的に語ってくれた。日雇いで僕と一緒に鉄骨運んでいるようなおっちゃんが愛人にマンションをプレゼントできるくらいの身分だった、とはにわかには信じがたかったが、まあおっちゃんが昔語りでいい気分になっているのだから、と僕は「へえすごいですねえ」と感心してあげたりしたものだ。
失職して日雇いで毎日を凌いでいる生活をしているなら、その愛人のマンションに転がり込めば?と聞くと、それはプライドが許さないそうだ。
「俺が愛人にあげたものだからねえ。金なくなったから返して!とも言えんわな」
おっちゃんは食わねど高楊枝である。
こうして、おっちゃんが事業に失敗して文無しになると、愛人とも縁が切れてしまったそうで、マンションをタダ取りされたようなもんだ、とおっちゃんは笑っていた。お金があるから愛人契約をしていたようなもので、愛人活動が円滑にできなくなったらそこでぷっつりと切れてしまう。愛人どころが彼女さえいたことがない僕は想像でしか物は言えないのだが、お金でつながっている関係なんて、そんな薄情なものだよなと現実の世知辛さをおっちゃんに教わったようなものだ。
それからしばらくして僕はようやく就職を果たして日雇い生活からは脱出した。愛人契約ができるくらいの身分になれるまで頑張るつもりだ。
おっちゃんはあれからどうしただろうな?と思いながら営業先に車を走らせていると、通りかかった工事現場で鉄骨を運んでいるおっちゃんの姿があった。愛人に金をむしり取られて未だに日雇いで頑張っているおっちゃんの様子に、僕はやっぱり女のことは考えずに真っ当に働こうと考えるに至った次第である。
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